日記

300
2021.07.18

夜明け前、小屋を叩く強い風の音で目が覚めた。
外に出ると、ちょうど太陽が雲間から顔を出して、目を赤く染めた。
前天塩岳(まえてしおだけ)はかろうじて見えているが、肝心の天塩岳(てしおだけ)は強風で湧き上がる雲に完全に包まれてしまっている。
今すぐ登頂するわけではない、朝食を済ませ出発する頃には回復の兆しがあるだろうと信じ、出発の準備を進めた。

5時20分に山小屋を出発、まだ天塩岳に変化はないが、「きっと晴れる」、根拠の無い自信があった。「メイクドラマが待っている」そう口から何度かこぼれた。

山頂まで残り100メートルまで来ると、少しずつだが雲の先から太陽の光が届き始めた。
50メートル。時折雲が薄くなると山頂標識が見え、もうすぐそこだと思った次の瞬間!
風がブァ!と強くなり、雲がどんどん風下へと流され消えていく。
それはまさに、天塩岳による300座目登頂の最高の演出だった。ニセイカウシュッペ山、大雪山、十勝連峰、遠く阿寒岳や夕張岳まで。
背中を強く押す風が、この場にはいないたくさんの応援者からの「よーき!よくやったぞ、よくここまで来たぞ!」と祝福の激励のように感じた。
興奮気味に笑顔が弾ける。

ようやくゴールへの切符を自らの手で掴み取った。
さぁ~行こう!ゴールの利尻島へ。
最後の旅が始まる。

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 この日記に書かれている場所はこの辺りです