日記

計画変更は大正解
2021.07.17

300座目へと向かう朝。夜明けからどんどん気温が上昇していく。
先日のニセイカウシュッペ山は8日間も停滞する事になったが、天塩岳(てしおだけ)には待つことなく登らせてもらえそうだ。

8時30分に2百名山の時も利用した協和温泉を出発。この日の予定は35キロ先の登山口まで、宿泊は登山口の立派なヒュッテとなる。
歩き出して5分、電波がなくなる前に最初の天気予報を確認した。すると…明日の朝の予報が下方していることを確認。もしかしたら、雲に包まれて景色が見えない上に、ゆっくり登る暇もなくなってしまいそうだった。
登山口のヒュッテから明日の早朝出発していては、わずかな晴れ間も望めなくなってしまいそうな予報。少し考え、今日中に山頂手前の天塩岳避難小屋まで登ることを即決した。
ほとんど悩むことなく、スパッと決断できたことは、300座目が自分で意識していた以上に大きな一座になっているからだろう。少しでもイイ瞬間にイイ場面にその時を迎えたいという思いが自分を突き動かした。

今から山頂手前の避難小屋まで登るとなると時間的には遅いが、そこは林道をなるべく走って帳尻あわせ。士別市との峠のトンネルまでは早歩きし、そこからは小走りした。
その甲斐があり、何とか14時30分に登山口へと到着できた。荷物も重くなっていたため、ニセイカウシュッペ山の時のように疾走する事はできなかったが上出来だ。
ヒュッテ内に必要ない装備だけデポして、15時30分に避難小屋へと出発した。

前回は旧道コースを登ったが、今回は小屋の位置により、新道コースを選択した。他の登山者がほとんど下山した時間に登山口を出発する機会は少なく、いつもとは違う時間の登山は新鮮さがあった。朝日とは違う、森に差し込む光の色合いや山の染まり具合、そして、自分の肌に当たる感じ。なんだかセオリーから外れた登山に特別感があった。

登山口から1時間半で円山山頂に到着。ゴーロ地帯からは久しぶりに聴くナキウサギの声があちらこちらから。円山からの気持ちの良さそうな尾根道の先に、本峰の天塩岳。西日が流れる雲の合間から照らしていた。今日の宿泊地の山小屋は円山から下ったところにある。
これまでにここまで急な計画変更があっただろうか。
山に対し、自分自身に対し、最後まで最善を尽くしたい気持ちが今日の展開を生んだ。

円山からの眺めを十分堪能し山小屋へ。ヨーロッパアルプスにありそうなとんがり屋根の特徴的な造り、他の利用者はいない。
急遽ではあるが、こうして山の上で泊まるのも最後になるだろう。

快適な小屋で少し休み、夕食の準備をした後に、山小屋の裏にある西天塩岳へと登った。
山からの最後の夕日を見るためだ。雲の切れ間から、赤く染まる太陽が北西の地平線へと消えていくのが見える。少しでも長く山に触れていたい、そんな思いが西天塩岳から夕暮れを眺めながら、心の中を流れていた。
明日はいよいよ300座だ。

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