292座目雌阿寒岳
2021.06.07
2つで一座。前日は円錐型のきれいな形をした雄阿寒岳(おあかんだけ)。そして今日は同じ火山でも、活発に噴煙を上げる活火山の雌阿寒岳(めあかんだけ)。色も形も匂いまで違う山となる。
朝を迎えたばかりの阿寒湖畔、鈴の音響かせ、まずは白湯山(はくとうざん)を目指した。この山に登る必要はないのだが、中腹にはボッケという泥火山があり、山頂部には雄阿寒岳と阿寒湖が良く見える展望台もあるという。少し遠回りとなるが、雌阿寒岳の登山口へ林道を歩いていくより、歩きごたえのある道のりを選んだ。実は計画当時から迷わずこのルートは決めていた。これも、前回の弾丸登山とは違い、一座ずつ登ることで可能となったルートだ。
スキー場から白湯山への散策路に合流し、よく整備された快適な道が続く。そして温泉の独特な匂いが届くとお待ちかねのボッケ郡がボコボコと音とともに現れた。谷間に湯気が上がり、近寄れないが、灰色の泥が高温であることがよくわかる。案内板にはなんと噴気口が100℃もあると書かれていた。それは高温だ。
ちなみにボッケとはアイヌ語のポフケがなまったもので、意味は「煮え立つ」だそうだ
そこから急斜面を登り切ると、もう一つの目的地展望台となる。予想以上に立派な展望台で、阿寒湖と雄阿寒岳が良く見え、進行方向には遠く雌阿寒岳も見えていた。まだ距離はあるが、見えることで、先へ進む意欲が湧く。
一度林道に合流し、雌阿寒岳の登山口へと2キロほど下る。前回は下山口となったところから今回は登る。
8時に登山口をスタート。山頂までは6キロほどだ。
前回は風のように駆け下りたため、どんな道のりだったのかほとんど覚えていない。序盤は立派なエゾマツ、トドマツの森が続き、緩やかに標高を稼いでいく。標高1000m付近からハイマツへと切り替わり、ハイマツのトンネルが延々と続いた。時々切れ間があり、雪国の「トンネルを抜けると雪国だった」のように、目の前にそそり立つ剣ヶ峰の岩壁が飛び込んできた。
再び、長いハイマツのトンネルが続き、抜けるとその先に目指す雌阿寒岳と赤茶けた荒涼とした山肌が露わとなっていた。その光景に、7年前にハイテンションで駆け下ったことを思い出した。今回はゆっくりと登山道脇に身を寄せ合いながら咲く小さな花にも気を配り、大きな火口をいくつも持つ雌阿寒岳の一番高いところへと進んだ。
一番大きな火口の中には小さな火口があり、そこから立ち昇る噴煙が風になびいている。遠くから雪のようにも見える白い斜面を登り、9合目を過ぎると、なんとも神秘的な色を持つ青沼がある別の火口の淵へと登りきる。その色に感動しない登山者はいないだろう。
そして、ゴーゴーブォーブォーと激しい音共に噴煙を上げる噴気口に目を奪われながら、7年ぶりの山頂へと到着した。
7年前の山頂は少し雲がかかり、山頂が複数の火口の外輪山からなる場所であることに気付くことができなかったが、今回はその光景が良く分かった。
赤沼がある山頂直下の火口からも青沼側に劣らずすごい音がしていた。山頂には注意書きがあり、ここが活発な火山活動を続ける場所であること、長時間の滞在をしないようにとあった。
ここからの景色や噴煙、そして止めどない轟音を耳にすれば、長居したいとは思えないだろう。「もし万が一…今噴火したら」と思うと少しでも早く下山したい気持ちになっていた。
ここが昨日の雄阿寒岳とは全く異なる山であることを、山頂に立つことで強く感じる。
一通りの撮影などを終えた後は、足早にオンネトーへと下山した。
そして、これでようやく292座目を登頂し終えたことになったのだ。
鮮やかに輝くオンネトーから見上げる雌阿寒岳と阿寒富士。「大切な人にもここからの景色を見せてあげたい」そんな風に思える時間となった。
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