日記

言葉を失う
2021.05.20

標津町(しべつちょう)から羅臼町(らうすちょう)への道のりは根室海峡を横目に海岸線を直(ひた)歩くことになるかと思っていたが、そうはならなかった。
道のりのほとんどが高台にあり、海岸線は険しい火山活動によりできた海岸断丘が続く、知床半島ならでは地形となっている。

行き交う車はスピードを落とすこともなく、あっという間に消えていく。そんなとき、ふと頭上の木から視線を感じた。直ぐには分からなかったが、立ち止まり目を凝らすと、それがオジロワシであることが分かった。飛び去る羽の大きさに「おおー大きいなぁ!」とこぼれた。カラスや海鳥が小鳥のように見えてしまうほどの大きさだ。

日が西へと傾き始めたとき、突然一台の車が反対車線に停車した。勢いよく運転手の方が下り、こちら側の車線に走ってくる。
「すみません。田中さんですか?吉岡です。」マスク姿の男性の声にどこか聞き覚えがあった。
「はい。そうです。」と返答すると「吉岡です。○○さんと一緒に仕事とされていますよね?」と10メートルほど離れたところでマスクを外しながら、こちらに一礼された。
その顔を見てビックリ!なんと俳優の「吉岡秀隆さん」ご本人だ。
「えっ!えええ!!」
突然のことに動揺してしまい、「純だ!」と言いそうになったが、喉元でギリギリ止まった。
「○○さんによろしくお伝えください。いつも見てます、応援してます!頑張ってください!」と身に余る言葉をいただいた。
「ありがとうございます!」と頭を下げるのが精一杯。
まさに風のように走り去っていってしまった。

故郷は北の国からのロケ地、小さいときから撮影現場を目にしてきたが、実は一度も純や蛍を見たことがなかった。
まさか、富良野から遠く離れた羅臼町で声をかけていただけるとは。
この旅で、有名人の方から突然話しかけていただくのは、モンキッキー(おさる)さん以来のことだった。
その後は興奮覚め止まず、「旅の途中」という名の泊まるべくして泊まる宿に16時過ぎに到着した。

 この日記に書かれている場所はこの辺りです