人里へ下山~精魂尽き果てて
2021.04.29
日高山脈主稜線からは昨日無事に下山してきたものの、ここはまだ日高山脈の懐の中だ。
人里までは20㎞ほど林道を歩き、さらに、宿泊先までは馬の放牧地を抜けて20㎞歩かなくてはいけない。入山時よりかなり軽くなったとはいえ、まだバックパックの重量は30㎏ほどあるだろう(感覚で)。それを背負って疲れ果てた心身で40㎞を歩くのはなかなか大変だ。
縦走最終日の夜は、神威山荘で過ごした。山小屋のストーブに薪を入れて暖をとることがで、暖かい一夜だった。それだけで、ずいぶんと幸せだった。
目覚ましを、5時にセットしていたが、結局4時に目が覚めてしまった。火が消えたストーブを起こし、少しずつ暖まる山小屋で、コーヒーを飲みながら目を覚ました。
8時の出発予定だったが、昨日、装備全てを乾かすため広げすぎてしまい、片付けに時間がかかってしまった。さらに拍車をかけたのが、疲れきっているためか、頭がなかなか冴えずに動きも遅い。
4時に目が覚めたのに、出発まで4時間半もかかかった。
身支度を整えた最後は、山小屋の清掃。毎回のことだが、「利用する前よりも綺麗に」がモットーだ。床の掃き掃除とトイレを掃除して、「ありがとうございました」と誰もいない山小屋に頭を下げて出発。ヒグマの存在に脅えながらも、先を急いだ。
トレッキングシューズが昨日の渡渉により濡れたため、固くなり、親指の爪を圧迫していた。靴ヒモを緩め、中敷きも取っていたものの、時間と共に痛みは強くなった。靴を脱ぎたいほどだ。しかし、林道を抜けるまではそれが出来ない。
4時間半でなんとか林道を歩ききった。
3キロほどさらにそのままの状態で歩いたが。アスファルトになっても痛みは増すばかり。トレッキングシューズを脱ぎ、ソックスのまま歩くことに。
その方が爪の痛みはなくなるが、他の痛みが出る。それは、かかとに刺さる小石だ。歩くとかかと着地となるため、小さな小石でもかなり痛い。
試行錯誤をした結果、荷は重いが小走する方が楽だと分かり、宿までの17㎞をソックスのまま走った。
道の両脇に広がる放牧地の馬たちが物珍しそうにこちらを見ている。道端には野花が咲き、桜も。
集中力が切れると一気に崩れてしまいそうな身体をなんとか気力で補いながら、17時過ぎ、ボロボロになったソックスのまま宿泊先のホテルに到着した。
部屋に入りバックパックを下ろした瞬間、ようやく日高山脈縦走の緊張から解放された。
久しぶりに精魂尽き果て、身体中ボロボロだった。