一番登られない季節に
2020.10.27
夜明け前に起床。いつもと変わらない流れで、排尿、歯磨き、洗顔をしてから、着替えて朝食をいただいた。塚原さんの子どもたちも眠い目をこすりながら一緒に朝食をとっている。
母屋の窓から見上げる空は明るく、雲一つない。自然と気持ちも上がった。
7時に塚原さんファミリーに見送られて、余市岳に向けて出発した。
キロロスキーリゾートを通り抜け、スキー場内の林道入り口に1時間ほどで到着。入林届けに必要な情報を書き込んで、林道を進んだ。
キロロ余市川コースの登山口は約4キロ進んだ林道の終点にあり、標高は850メートルだ。
昨晩、塚原さんから言われた「この時期の余市岳の魅力」をしっかりと胸に、林道歩きから、余市岳の表情を注視しながら歩いた。植生、山の形、紅葉具合、落葉具合など。
登山口が近くなると空にはたくさんの雲が西の空から流れ、あっという間に余市岳山頂部を隠してしまった。一時不安になったが、今日はきっと回復してくれる予感があり、今は目の前の景色に集中した。
登山口を8時45分に出発。山頂までのコースタイムは2時間35分(無雪期)だが、積雪量によってはそれ以上かかることも想定して、登山道を進む。最初は余市川の源流に沿って登った。余市岳から流れ出した水が、余市川となり、日本海へと流れ込む。その河口周辺には余市町が広がる。余市町から遠く離れた場所にある余市岳を川がつなげているのだ。
川を渡ってからは尾根をどんどん登った。標高1200メートルを超えると、雪の重みに耐え続ける力強いダケカンバが現れた。太くねじり曲がりながらも上へ上へと伸びていた。
夏場ならたくさんの葉に隠れて、幹や枝の様子はわかりにくいだろう。木の幹の表情を見るには、晩秋、初冬の森が一番いいのかもしれない。
さらに進むと、積雪量は10センチ位となり、背丈の高い竹笹が雪の重みで倒れて、視界が広がった。そして、余市岳山頂部にかかっていた雲もいつの間にか流れて、ようやく、この日最初のご対面となった。
太陽の光を浴びた山肌がキラキラと輝き、パラパラカサカサと霧氷が音を立てて溶け落ちていく。場所によっては、たくさんの雪が着いて、木の枝がぐにゃりと曲がり、今にも折れそうなほどだ。
見晴台からコルへ一度下がり、最後の急斜面を雪に足を取られながら登った。ダケカンバの林を抜けると、もうその先に山頂が見える。しかし、目前には背丈より少し低いハイマツ帯となった。ここも情報通り、雪により倒れたハイマツが登山道を塞いでいた。
今年1月の安達太良山に比べたら、だいぶ楽ではあったが、ペースはガクンと落ちてしまった。それでも、出発から2時間40分で初登頂。コースタイムから大きく遅れることなく登り切ることができた。
山頂は晴れているとはいえ、さすが風が冷たく、あっという間に体が冷えた。風上に雪の壁を作り、風が当たらないところで、休憩した。
山頂からは羊蹄山や札幌の山々、日本海、ニセコ連峰や積丹半島まで眺めることができた。麓はまだまだ紅葉が広がり、山の中腹には白樺やダケカンバの白い幹肌や笹の深い緑、そして、足元から広がる銀世界。山がグラデーションのようになり、季節のふれ幅が広いと感じた。
山頂で1時間半のんびり過ごし、午後1時に下山を開始した。
下山は案の定、降り積もった雪が溶けて、ドロドロの登山道となった。滑りながらもなんとか怪我なく、林道入り口まで歩き終えることができた。
ロッジまではスキー場まで迎えに来てくれた塚原さん、ご長男と一緒に歩きながら帰った。
帰り道、雪の状態などを伝えつつ、「この時期の余市岳は静かで、山頂部の銀世界と麓の紅葉でとても不思議な感覚になりますね。冬と秋が同時に味わえました。でも、やっぱりもう少し待って、本格的な冬が始まってからがいいかもしれませんね」と報告した。それを聞いた塚原さんは笑いながら、「やっぱりそうだよね。でも、今度一度この時期にも登ってみようかな~」と言っていただけたことが嬉しかった。
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