鮭の産卵
2020.10.11
北海道に上陸してから、河口に架かる橋を渡る度に川を覗き込んでは、遡上する鮭の姿を見つけてきた。
10月も中旬に入り、今年の鮭の産卵シーズンはピークを過ぎそうな感じだろうか。
北海道島牧村(しままきむら)にある北の江ノ島海岸から一日がスタート。今日は昨日よりもやませの風が強い。海岸を歩く分には山陰で影響は少なそうだが、午後からの黒松内町(くろまつないちょう)へと抜ける峠道では、かなりの風をまともに受けることになりそうだ。
さざ波を聞きながら、走る歩くを交互に繰り返し進む。日本海と山に挟まれて国道に沿うように建つ家の中には、空き家が少なくはない。北海道の中でもこの辺りは過疎化の速度が早そうな感じがした。10年後20年後はどんな風になっているだろう。
16キロ海岸線を歩き、いよいよ黒松内町への峠道となる直前、小さなコベチャナイ川で鮭が産卵行動をしている姿を目撃した。産卵床を尾びれでせっせと作る雌のそばには二匹の雄(一匹は雌より一回り小さな雄、もう一匹は雌よりも一回り大きな雄)が雌を取り合っているようだ。
しかし、よく見るとすでに一回り小さな雄が雌に認められているような感じで、体格差を生かして迫る大きい方の雄に、小さな雄が果敢に噛みつき雌を守ろうとしていた。何度も噛みつくが大きな雄は微動だにしない。
橋の上から「オイ!小さい方!負けるな~」と届かぬ声をこぼしながら、20分ほど見守った。
その戦いはそう簡単には終わりそうにもなく、残念だが結末までは見届けずに、標高差400メートルある黒松内町までの20キロの峠越えへと走りだした。
コベチャナイ川でみた光景が今年も数多くの川で繰り広げられているのだろう。
峠の最高地点は風力発電の風車が勢いよく回り、笹が乱れ揺れる音が騒がしかった。
明日から2日間の休養となるため、体力を温存することなく、峠からの下りも走り、夕暮れの静かな田畑が広がる黒松内町へとたどり着いた。こじんまりとしているが、駅を中心に住民が肩を寄せ合うように町を築いている光景に、海岸線の町とは対象的に映った。
明日はのんびり過ごせそうだ。