日記

これが焼石岳だ
2020.08.02

焼石岳(やけいしだけ)に登ったのは5年前。和賀岳(わがだけ)を登った翌日に、梅雨時期の不安定な天気の中を半ば強引に登った。雨、そして終始濃霧、気温は低く風も強かった。山頂付近の視界は一番ひどく、10メートル位だったため、道に迷うこともあった。
山頂に到着し、標識の焼石岳の文字を確認するだけに終わったような感じ。この3度目の旅を始める強い原動力となった山の一つだ。
そのため、焼石岳を描いてといわれても、真ん中に標識をポツンと描くことしか、これまでできなかった。

4時半に起床。窓の外は明るくなり、空は雲一つないように見える。5時から朝食をいただきながら、再び窓をのぞいた。間違えなく雲一つ無い空が広がっていた。これはもしかすると予報以上の晴天になるかもしれない。期待が自然と膨らんだ。

荷をまとめ、6時に9キロ先の登山口へ向けて、軽快な足取りで舗装路を走った。朝日がまぶしい。7時45分に登山口到着。昔から地元の人たちに守られてきたブナ林を登った。
一際太く大きなブナは、子孫を残すための母樹として長い年月を生きているという。
30年前まで、牛も八合目の放牧地まで登ったという、灌木の長いトンネルが続く稜線をしばらく進む。

いつの間にか、快晴だった空には雲がかかっていたが、八合目までは長らく樹林帯となっていたため、抜けるまでにきっと雲が晴れてくれると信じ、川を三度渡り、牛たちの避暑地となっていた放牧地へと、出発から2時間半ほどで到着。水温5.8度のキンキンに冷えた長命水を飲んで生き返った。

牛たちにとっても最高の放牧地といえる景色が今も広がり、高山植物に紛れて、高地ではみない植物もあった。これは牛が麓で食べた草花を山で排泄したことで、種が発芽して自生してしまったと考えられるそうだ。
透き通った焼石沼には魚の姿も。見上げると両翼に大きく肩を突き出すように、一番奥に焼石岳山頂が見えた。

足元には早速たくさんの花が。先日の栗駒山が比べものにならないほどの豊富な種類と見渡す限りの花畑だ。興奮状態で八合目の放牧地から九合目へと登った。
ハクサンフウロウ、タカネナデシコ、ハクサンシャジン、トウゲブキ、クガイソウなどなど、色とりどり。群生の範囲も広く、登る足取りが何度も止まった。
そうしていると、雲から太陽が一面に差し込み、さらに高山植物たちが輝いて見えた。

九合目から真っ直ぐ進むと20分ほどで山頂だが、東側から山頂台地を回り込むようにして登る事に決めていた。なぜなら、東側にはハクサンイチゲの大群落があるからだった。それを目当てに登ってくる登山者もこの時期は多いと聞く。
1時間ほど雲に包まれたが、泉水沼(せんすいぬま)手前でお目当てのハクサンイチゲがちょうど見頃を迎えていた。去年、南アルプスで出会ってからシモツケソウと1、2を争う好きな高山植物となっている。
そこから咲き終わったチングルマを足元に見つけながら、出発からじっくりと5時間かけて、ようやく5年ぶりの262座目焼石岳へ無事に登頂させてもらった。

湧き上がる雲で遠望はできなかったが、眼下には登ってきた道のりが見え、5年越しで焼石岳の姿に出会うことができた。山頂でゆっくりとしたいところだったが、お楽しみの時間はここまで、雲行きが怪しくなる前に、岩手県奥州市(おうしゅうし)のつぶ沼登山口へと駆け下った。無事に下山してびっくり、1日の登山距離が22キロを超えていた。
さぁ~ここから一気に東へと進むぞ!

!登山ルートをYAMAPでチェック!

 この日記に書かれている場所はこの辺りです