3ヶ月半かかりました飯豊山
2020.03.15
夜明け前、4時半から1日がスタート。
さすがに冷え込み、小屋の中も氷点下だ。バーナーで湯を沸かしながら、出発支度を始めた。ヘッドライトの灯りを頼りに朝食をゆっくりと食べた。食後のコーヒーを飲んでいると少しずつ外が明るくなってきた。
6時前に雲の切れ間から太陽が覗いたが、外は雲が多く、雪もまだちらついていた。
出発前、回復が遅れるかもしれないと覚悟した。なぜなら、昨晩の天気予報で明後日が朝から荒天に変わっていたからだ。
2泊3日の予定を変更して、今日中に下山した方が賢明だと考え直した。ただし、今日中に飯豊山(いいでさん)に登頂して、無事にこの避難小屋まで帰ってくることができた場合の話だ。
少し軽くなったバックパックを背負い、ヘルメット、アイゼン、ピッケルを装備して6時半に三国岳避難小屋を出発した。冬の飯豊連峰主稜線最初の一歩を踏み出した。
視界は昨日よりは良いが、飯豊山方面は雲に隠れて全く見えない。歩きやすい雪庇の上を避けて、雪面から出た灌木を目標に縦走した。飯豊山までの約半分となる切合(きりあわせ)小屋に、出発から1時間程で到着した。
雪質は、表面が固く凍っていたため、スノーシューは必要なく、慎重に進んでいたが、予想よりも早い到着だった。ここから先は雪庇の心配は少なくなる。
三国岳避難小屋よりも雪にしっかりと埋まった切合小屋を過ぎると、長い登りとなり、一気に標高が上がる。初日の疲れが残っているためか、足取りは重い。
頂上手前の本山小屋には切合小屋から1時間半で到着した。
標高2,000メートルを超えるのは、久しぶりだ。急に風が強くなると、東側から少しずつ雲が取れて、青空が顔をのぞかせた。しかし、飯豊山山頂は変わらず雲の中。小屋の中に入って、少しの間風を避けた。
10時過ぎに回復を信じて山頂へ向かった。10分で到着。待ちに待った登頂だったが、山頂は雲に包まれて真っ白。風下にて山影に入り、回復を待つことにした。30分ほど待つと、風が次第に弱くなりはじめ、北から吹き上げていた雲が晴れた。見上げる山頂の空は真っ青だ。これまでほとんど見れなかった冬の飯豊連峰が目の前に広がった。
再び山頂に立ち、歓喜した。
杁差岳(えぶりさしだけ)方面の雲は取れることはなかったが、うっすらと緩やかな稜線が見え、青空の中を縦走できたらどんなに気持ちが良いことか、と思っていた。いつかきっと飯豊連峰を縦走しよう。だけど、今回はここまでだ。飯豊山山頂に立たせてもらったことをしっかりと感謝し、名残惜しさを抱いて、三国岳避難小屋へと戻った。
登りよりも下山の方で緊張が高まり、予定よりも1時間程遅くなってしまったが、午後2時半に避難小屋に到着した。
縦走できなかった分、少しでも長く飯豊連峰に居たい気持ちが強かったが、天気予報を見れば、下山が遅くなっても、今日中に下りた方がいいのは明らかだった。小屋に残置した荷物をバックパックに詰め込み、最後の難所「剣ヶ峰」を下りた。
昨日は全く見えなかった景色が見える。次の山、蔵王山や懐かしい朝日連峰が見える。
そして、今いる剣ヶ峰がすごい所だということも。険しかったが、見えない中で進んだ昨日よりも明らかに見える状況の方が、心理的には楽だった。
そこから御沢登山口まではあっという間だった。後半は、重装備での長い一日で、疲れもたまり、膝が笑った。
宿までのロードは最後の力を振り絞って走った。暗闇の中、宿に無事到着。
ここまでの張り詰めたものが途切れて、どっと疲れが溢れたが、自然と喜びもこみ上げていた。
やった!登らせてもらえた。よかった!本当によかった。
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