一切経山初登頂
2020.01.19
今年4座目は一切経山(いっさいきょうざん)。
3年前に旅をスタートした時は、浄土平周辺の火山活動が活発なため、規制レベルが2とされ、一切経山への登山は禁止されていた。しかし、一昨年に規制レベルが1に引き下げられて、一切経山までは登ることが可能となったのだ。長い年月をかけて活動を続ける火山の状態と、旅のタイミングが合うことは、すごい偶然だと感謝した。
また、本来の計画では、西吾妻山から吾妻連峰を縦走し、登頂する予定だった。しかし、厳冬期の縦走の難しさに断念していた。
そのため、安達太良山(あだたらやま)を越えて、福島市側へと回り込んで、下山口予定としていた高湯温泉から登ることになった。天気予報は曇か晴れるかどちらになるか分からない感じだ。
それでも、予定通りに出発。空からはチラチラと雪が舞っていたが、東の空からは太陽が眩しく輝いていた。吾妻連峰が天気の分岐点となっていると実感した。
高湯温泉から、一切経山へとこの時期に登っている人は少ないと聞いたが、全くいないわけではないようだ。登山口に着くと、先行する二人の足跡があった。
このところの3座は、誰も歩いていない道のりだったが、今回は先行する登山者のトレースを辿れるとあり、少しだけ気が楽になった。
しかし、喜んでいたのつかの間、30分ほどで先行する登山者を抜かしてしまい、結局、不動の滝から先は、いつものように一人ラッセルとなった。
上空の雲の動きは早く、雲が晴れる気配はない。
兎に角、登頂させてもらう条件となるならないに関係なく、上へ上へと登り続けた。登頂できなければ、下見登山となるし、登頂できれば、素直に喜べばいい。ラッセルは続いたが、樹林帯の中を進むため、風はほとんどなく、意外と静かな登りになった。
雪は予想よりも多かったが、安達太良山の時よりも、雪の状態は良く歩きやすい。
慶応小屋への分岐を過ぎると、上空の雲は一気に晴れてきた。半信半疑で登ってきたが、少しだけのチャンスで、登頂することができるのではと、にわかに想像し始めていた。
ぬか喜びにならないように、ペースも気も緩めずに登る。予報はあくまでも予報。
そして、出発から3時間で、夏場コバルトブルーに輝き、「魔女の瞳」とも呼ばれる五色沼の外輪山の上へと到着した。
もしかしたら…と思って登ってきたが、冷静に考えれば、冬は氷ってしまうわけで、魔女の瞳は閉じていた。それでも、強かった風も少しだけ落ち着き、登頂させてもらえそうな、空模様となっていた。
五色沼を左に見ながら回り込み、一切経山最後の登りへと差し掛かる。
西吾妻山では、木々が見事な樹氷になっていたが、一切経山周辺はまだまだこれからのようだ。
標高1900メートル付近で、木々は一本もなくなる。山容は西吾妻山に似ていても、火山活動の年代が違うため、植生は全く違っていた。大きな丘のような山頂には、霧氷が張りついた信仰の証となる塚のような小山があり、そこにはたくさんの石碑が立っていた。
山頂の標柱は三角点の脇に立っており、霧氷を削ると、一切経山の文字が現れ、区切りの250座目への登頂を実感することができた。
一切経山から、火山活動中の浄土平方面を見下ろすと、雲ではない白い火山性ガスが絶え間なく立ち上っていた。さらに直ぐとなりには吾妻小富士のきれいな火口が見えた。
ここまで一度のチャンスでは登らせてはもらえなかった、磐梯山や西吾妻山、安達太良山、それらを眺めることはできなかったが、今回スムーズに登れてしまったことに、不思議な感覚もあった。
再び雲が厚くなり始めたため、山頂をあとにして、冷えた体を高湯温泉で温めることを楽しみに、麓へと駆け下りた。
予定よりも、1週間ほど長くかかってしまったが、この山域を無事全て登り終えることができたことで、温泉に入りながら、ホッと肩の力が抜けるのを感じた。
次は那須連山へと100キロ以上のロードとなる。
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