心強いトレースに導かれて
2019.12.09
夜明け前、下駄箱の扉を開けると、置き手紙が靴の横にあった。手紙には「昨日三条市の山岳会の有志6名が田中さんのために山頂までラッセルしてくれました」とあった。
観光協会会長さんからの直々の手紙と内容に朝から驚きを隠せなかった。
大変ありがたいことではあったが、素直に喜んでいいのか、という心境でもあった。
放射冷却で昨日よりも冷え込んでいたが、今月一番の晴天になりそうだ。
長い間雲に隠れていた粟ヶ岳(あわがたけ)の全貌が見え、標高1300メートル足らずの山なのだが、真っ白なその姿は2000メートル級の山に見えた。雪がこうも山の印象を変えてしまうのかと強く感じながら、五百川登山口を目指した。
太陽が山を越えて来る頃に登山口を出発。月曜日だが、久しぶりの晴天のためだろうか、数台の車があり、先に登っている人の足跡があった。そして、手紙にあった方々の足跡もしっかりと残っていて、事実であることを再確認した。きっと先行する登山者も、この方々のトレースに感謝しているに違いない。
最初は林道を行き、終点から川沿いに登山道が続いた。積雪は10センチにも満たない。
橋を渡り、昔は女人結界となっていた元堂を通過。落ちるとただではすまない滝上部を越えて、尾根へととりついた。
標高500メートルを超えると徐々に積雪が増え、薬師堂がある避難小屋に着く頃には、積雪は50センチ程となった。しかし、踏み跡がしっかりとしているお陰で、スノーシューの出番はまだない。さらに標高を上げていくと。降り続いた雪で、灌木は押し倒され、行く手を遮ったり、釣竿のように大きく枝先を曲げたりしていた。見事な青空の下、木に積もった雪が美しく映えていた。
途中、地元の大学生とすれ違う、久しぶりの快晴で早朝に出発して登頂してきたそうだ。これから急いで下山して、授業前に出るという。冬でも晴れれば、登りに来る人が意外と多く、この日だけで、15人位はいたかと思う。
標高1000メートルを超えると灌木は少なくなり、牛の背といわれる細い尾根の先に、粟ヶ岳頂上部が目の前に広がった。ここでスノーシューを履き、山頂までは雪のコンディションを自分の足で確かめるためにトレースを外れて登った。登山口出発から3時間30分で初めての粟ヶ岳山頂に到着した。風はさすがに冷たいが、眺めは抜群に良く、久しぶりの飯豊連峰はさらに白くなり、これから登る守門岳(すもんだけ)や浅草岳、御神楽岳(みかぐらだけ)も真っ白になっていた。どの山もここよりも標高が高いため、粟ヶ岳以上に積雪があると予想した。
山頂部の雪に穴を掘って、即席のスノーシートを作った。オーシャンビューならぬマウンテンビューを昼食をとりながら満喫した。気づけば2時間山頂でのんびり過ごしていた。
下山する頃には、気温もかなり高くなり、灌木に積もっていた雪はほとんど落ちてしまっていた。
これで今月は2座目…年内はあと何座登れるだろうか。次に目指す守門岳に目を向けながら、五百川登山口へと駆け下った。
下山後、粟ヶ岳を振り返ると、やはり2000メートル級の山に見えた。
最後にあらためて前日にラッセルしてくれた皆様にお礼を申し上げます。ありがとうございました。
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