川根本町から静岡市へ
2019.07.26
早朝まで雨が降っていた寸叉峡も、8時の出発時にはすっかり上がって気持ちよい青空に日差しが差し込んだ。これだけで気分は上々だ。だが、体は久しぶりの長い縦走により、疲労度は高く、重さを感じる。
日本唯一のアプト式鉄道である大井川鐵道井川線に沿って上っていく。SNSの影響か、民家も駅までの道もない奥大井湖上駅が人気となっていると知り、鉄橋に架かる歩道を使って駅へ立ち寄った。
一般的な列車よりも小さく、登山鉄道のような特徴的な車両が、客車を引っ張り千頭(せんず)方面へと走っていく姿を見送った。
その後、接祖峡(せっそきょう)温泉にて昼食を済ませた。昼過ぎから天気予報通り、天気は急変し、激しい雨となった。降りしきる雨の中を井川へと歩き続け、井川のアルプスの里という地元のおばちゃんたちが経営する茶屋にて、地元の方々と談笑しながら休憩をした。
昭和12年生まれのお爺ちゃんは、歯医者さんから「お爺ちゃんは虫歯がないね~」と誉められたと、誇らしげに話し、ニカッと笑うと歯が一本!みんな大笑い、そりゃ虫歯はないね~と。山のことや井川のことなど、色んな話をしてくれたが、最後は話がそれて、笑い話へと変えてしまう。話を変える前にお爺ちゃんが話しながら笑ってしまうから、聞いている方もつられて笑ってしまう。
一番の大笑いは、赤ちゃんの時に親族のお兄さんが子守りをしていたらしく、お兄さんの乳を吸って育ったという。また、冗談かと思ったら、その張本人の大正15年生まれのお爺ちゃんが「これは本当!」と真面目な顔で言った。当時高校生だったお爺ちゃんは、思春期で胸がもぞもぞしたらしく、赤ちゃんが乳を吸うのが良かったそうだ。
乳を吸って育ったお爺ちゃんは、「当時は食料難だったから」と最後に笑い話となった。
温かい井川の人たちに迎えられて、宿へと入った。