平谷の流したい
2019.07.14
夏の始まりを感じる7月の三連休、川根本町では何か行事や祭り事がないかと、地元の方に伺うと、「流したい」という毎年の恒例行事が瀬沢集落であることを教えていただいた。1年半以上、旅を続けているが、意外と地域の祭りに出会うことが少ない。
地域の人々が、大井川の川岸に藁や竹を持ち寄って、その場で、松明(たいまつ)を立てるための台座を組み、大井川へと流すという。雨が降っても、必ず続けているそうだ。
梅雨時期とはいえ、毎年流したいの日は晴れることが多いそうだが、今日は重たい雲から霧雨が降る中となった。
「平谷(ひらや)の流したい」はなんと江戸時代から続けてこられた例祭で、大井川流域の水川で鉄砲水が発生し、麓の集落へ大洪水をもたらし、伝染病により、大きな影響が出たため、自然の怒りを恐れた住民たちが、水の神である「津島神社」を祭るようになったそうだ。
そして、愛知県にある本社への献灯(けんとう)であり、流燈(りゅうとう)として始まったという。
昔は、大井川沿いの各集落で、毎年7月14日に流したいが行われていたそうだが、今は瀬沢の集落のみとなったらしい。
200年近く続く地元の伝統行事の一部始終を見学することができて、大変貴重な一時となった。
大人が作る流したいは松明の高さは3メートルほど、台座も3メートルほどの大きさとなった。地元の人の手を借りながら、小学生が作る流したいは小さな松明が3本立てられ、台座は大人のものよりも半分ほどだった。
神事のあとに、松明に火が灯り、雨で濁り増水した大井川へと流された。
年によっては、沈んでしまったり、倒れてしまったりするそうだが、今回は増水しているからか、倒れることなく、あっという間に流れていった。
雨が降るなか灯る松明に、大井川に住む人たちの、遠く愛知県の津島神社への想いがつまっているようにも見えた。