丁寧な登山
2019.07.02
週間天気予報では傘マークがならんだ。その中で唯一の曇マークが1日だけ、それが今日だ。今日以降は1週間先まで、雨となっている。熊伏山(くまぶしやま)を登ってから10日が経過、大幅な迂回と停滞が続き、これ以上スケジュールを遅らせたくないという「焦り」は自然と募ってくる。「もうこれ以上は待てない」「先に進まなくては」という気持ちが高まり、当初のルートを変更して、川根本町(かわねほんちょう)下長尾から日帰りで178座目「高塚山(たかつかやま)」へと向かった。
夜明け前に起床し、5時過ぎに出発。日帰りといえど、かなりの距離のため、宿に帰ってくる時間は遅くなる可能性が高かった。なぜなら、往復40キロ以上になるからだ。苦肉の策だったともいえる。
林道は途中で土砂崩れが起き、通行止めとなっているため、大札山(おおふだやま)経由で蕎麦粒山(そばつぶやま)~高塚山を往復するルートとなった。
展望台がある白羽山(しろわさん)への道のりはヒルの巣窟だったが、大札山への登山道に入ると、ヒルの姿は見えなくなった。
雨が降る予報ではなかったが、梅雨らしい雲行きで、いつ降ってきてもおかしくない空模様の下、案の定ポツポツと降ってきた。大札山の標高は1374メートルしかないが、麓の集落からは標高差は1120メートル以上もある。歩きだと結構登るのだ。
大札山を9時過ぎに越えたが、北尾根を蕎麦粒山登山口へ向けて下り始めると、再び雨が降ってきた。
そして、進む先の山が見えた時に、その姿や雰囲気からハッとした。
「こういう登山をしたくて3度目の旅を自分は始めたのか…」
昨日地元の山岳ガイドさんから、深南部の良さを聞いたときの言葉を思い出した。「深南部を感じられるのは、蕎麦粒山から黒法師山への縦走路」と。
当初は、高塚山と黒法師山は1泊2日で縦走計画を立てていた。きっと気持ちのいい縦走ができるはずと信じてもいた。それを天候を理由にあきらめてしまうのか…。
もう少し待ってもいいのでは、待てる自分がいるはずだと思った。
このとき、そう感じた場所から、高塚山まではコースタイムで5時間ほど、ここまでのペースを考えれば、3時間ほどで登頂できそうだった。しかし、目的の高塚山はどす黒い雲の中、初めての深南部を味わうこともなく、帰ってきてしまう気がした。
「引き返そう」と決断した。
ここまで来たのだから…という気持ちが残り、決断してから動き出すまでに少し時間がかかったが、初心を忘れないようにしよう、「丁寧な登山」をしよう、と大札山へと登り返した。
この旅ではよほどのことが無いかぎり、再び同じ山へと戻ってくることはない、限られた時間の中で、少しでも丁寧な登山ができるように心がけられるかが、この先の旅にも大きく影響することは間違えないと悟った。
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