ぎりぎりのラインを見極めて
2019.04.04
昨日まで、3日間季節外れの強い寒気が入り、日本海側は雪となる日もあった。山はというと、一度も晴れることはなかった。
積雪量も4月としては驚くほど降った。今日は140座目となる「青海黒姫山(おうみくろひめやま)」へと登る。標高1221メートルと低い山だが、雪は多く、昨日までの雪で、極めて雪崩のリスクが高くなっていた。なぜなら、この山は石灰岩でできているために、山のあちこちで採石されていて、一つしかない登山道は、急斜面をトラバースしながら登っていくことになる。
降り積もった直後で、気温が上がれば、状況によっては途中での下山も考えていた。
青海黒姫山の次は雨飾山や火打山、妙高山へと入っていく予定だったが、そっちの方はもっと雪が積もり、トータルで1メートル近くも積もったと聞く。そのため、青海黒姫山のあとはルートを変更して、さらに標高の低い米山(よねやま)へ行く決断をしていた。
予期せぬ山間部の大雪に、不安や緊張、焦りも出ていたが、まずは目の前の一座へ集中することに努めた。
緊張もあったが、それを和らげるために、「雪崩の兆候があったら、直ぐに下山してくればいい!」と言い聞かせた。
今日はまさしく「登りたいと登れる」の狭間を歩いていく感じだ。
標高300メートル付近から雪上となり、一本杉峠からはしっかりと雪が残っていた。新しい積雪と古い積雪の感触を確かめたり、前方や上部の斜面の状況を逐一観察しながらの登山が続いた。斜面を大きく右にトラバースしながら標高を上げていき、折り返しからは傾斜はさらにきつくなっていく。
最初の雪崩のリスクが高い地点に差し掛かった。樹林の中をほぼ登山道と同じルートを辿ったが、途中からはトラバースを避けて真っ直ぐ登っていたために、登山道からそれてしまっていた。
地図を確認し、途中からはルートを変更した。直感だったが、かなりの急斜面の直登を選び。石灰岩特有のドリーネ(地中が空洞化して、地面が陥没する地形のこと)が点在する金木平に出た。そこからは、再び登山道と同じルートを辿った。そして、2度目の雪崩やすい地点に入った。すでに、木や岩からの落雪で、雪崩に似たような状況が起きていた。標高が上がれば、新雪の下の古い雪は固くしまった状態のため、登ることで雪崩を誘発させてしまう恐れがあったが、一歩一歩感覚を研ぎ澄ませて、登り続けた。
自分の判断では、積雪量がそれほど多くなかったために、斜面に対して雪自身が滑り落ちる力が働かなかったと考えていた。ただし、その積雪量はきっと紙一重だったと思う。
下の古い積雪との関係や気温、日光、斜度、歩いた場所、時間帯など、様々な要因が絡み合って、雪崩は起きると思われるため、登りは大丈夫だったからといって、安心はしてはいなかった。最大の難所を越えて、少しだけ安心した。山頂手前で休憩したあと、再び山頂へと登り、昼過ぎに登頂することができた。
山頂からは見事な景色と、背筋が凍る景色が見えた。雨飾山から妙高山へと続く山脈は、まさに厳冬期の山そのものだった。とても明日明後日で春山になるとは到底思えない姿だ。
改めて、これから進む山は落ち着くまでじっくり待とうと思った。
懐かしい北アルプスの山々はさらに真っ白く、去年秋に登ったときとは別世界となっていた。山頂からみる青海黒姫山の姿も独特で、蟻地獄のように、たくさんのドリーネが点在していた。登頂写真をとったあとは、再び緊張感を高めて、下山を開始した。
あっという間に下山、朝と比べると大分雪が減っていた。
これから、しばらくは「登りたいと登れる」の狭間を進むことになりそうだ。
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