日記

天城越え
2019.02.24

昨晩は雪がちらついていたので、朝起きると外は一面の雪を期待したが、雪の姿はどこにもなかった。
しかし、霞む空の先には富士山が顔を覗かせてくれていた。麓も山も、天気予報では気温は低いが晴れ、朝の霞は日が登ると共に消えていくことを予想した。

天城山(あまぎさん)へ登るのは5年ぶり、前回は百名山の旅の時だ。あれ以来と思うと、懐かしいと思われがちだが…実はほとんど記憶がない。なぜなら、百名山の時はあまりの疲労で、身体は思い通りに動かず、自分の身体とは思えないほどだった。
そのため、歩くのが精一杯で、最高峰の万三郎岳までは、コースタイム以上かかり、万二郎岳へ縦走できずに下山した。山の雰囲気すら、ほとんど記憶にないのだ。

前回は真夏だったが、今回は真冬。麓は春が進んでいるが、山はまだまだ冬が居座っているようだ。しかし、例年よりも雪が少ないと聞く。何よりも前回より体調も気分もいい。山を味わい記憶にとどめることが今回はできそうだ。

今回のコースは、前回の逆コース。天城山縦走コースをいく。旧天城トンネルまでは17キロ。距離は長いが、比較的アップダウンが少ないため、「ちょっと長めの縦走チャレンジコース」としておすすめだ。
登山口はゴルフ場脇から、前回は断念した万二郎岳へと登る。週末のため他の登山者もちらほら。万二郎岳に登頂したときには、朝見えていた富士山はすでに見えなくなっていた。

麓は暖かそうな雰囲気だが、雪こそないとはいえ、やはり山は全然違う。春を感じる物は全くない。寒々しい天城の山を、唯一常緑樹のアセビ(馬酔木)だけが彩っていた。万三郎岳の手前で、シャクナゲが群生していたが、5月に咲く花はまだまだ冬眠中だ。

万三郎岳はやはり最高峰だけあり、山頂は賑わっていた。しかし、空模様は徐々に下降を始めていた。
日差しはなくなり、気温がグッと下がり始めたが、動き続けていればちょうどいい感じだった。前回と逆コースとはいえ、歩き進めていくがほとんど記憶になく、「こんな感じだったかな~こんなところ歩いたんだ~」とこぼす。

万三郎岳から緩やかな尾根道へと下りると、きれいなブナの原生林が続いていた。天城山は展望がある場所が少ない、したがって山を包み込む木々や植物たちの変化や表情をゆっくり味わうことが出来るよさがある。
長いブナ林を抜けていくと、八丁池が突然現れた。凍ることはなく水面が風に揺れていた。眺めているとポツポツと冷たい雨が降り始めた。旧天城トンネルまでは残り5キロほど、レインウエアを着て、走り出した。午後3時過ぎ、石造りの見事なトンネル前へ下山した。

5年越で初めて天城山縦走コースを歩ききることができた。
湯ヶ島温泉(ゆがしまおんせん)までは車道を行くが、河津桜を見に行った帰りの観光客の車両渋滞が続いていた。その脇を颯爽と走り抜けていく。この旅では、車やバイクには抜かれていくばかりだが、滅多にない機会に、車を抜き去る自分が心地よかった。

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 この日記に書かれている場所はこの辺りです