日記

進む
2018.10.28

中房温泉に3泊しているうちに、山の天気予報に変化があった。28日29日の2日をかけて、中房温泉から表銀座~常念岳~徳沢へと歩く予定だったが、29日が朝から荒れ模様となるため、28日中に徳沢まで下山するか、最低でも常念岳を登り、蝶ヶ岳ヒュッテまでたどり着く必要が出てきた。

夜も明けない午前5時、ヘッドライトを照らし、中房温泉登山口より、合戦尾根を登った。暗闇の中を歩くのはかなり久しぶりだ。北アルプス三大急登の合戦尾根を登っていくと、僕よりも早く出発した登山者の鈴の音が聞こえてくる。
出発から間もなくすると、東の空が白みはじめて、空が赤くなる。そして、太陽の光が今日も北アルプスの山々を照らしてくれる。
気温はぐっと下がっていたが、徳沢までコースタイムが19時間だったために、ハイペースで進み、汗だくになった。

燕山荘(えんざんそう)の回りの木々は霧氷になっている。4日前とは景色も体感温度もがらりと変わっていた。山荘の方に挨拶をして、直ぐに大天井岳(おてんしょうだけ)に向けて、表銀座へと駆け出した。西からの風は強く冷たい。冬へとぐっと近くなっているのを感じる。
大天井岳はうっすらと白くなり、6日前よりも凛々しく、一段とかっこよく見えた。大天荘(だいてんそう)で休憩をはさみ、爽快感のある常念山脈へと走り出した。

槍ヶ岳から穂高岳までの3000メートル稜線も、さらに白さが増して、数日前に登った時とは、別の山のように見えた。美しさよりも恐ろしさが西風と共にぐっと伝わってきた。
常念岳がどんどん近づくと共に、穂高連峰には雲が湧き、しばし隠れてしまった。今回で3度目となる常念岳へと常念小屋に立ち寄らずに一気に登る。

週末のためか、思った以上に常念岳には登山者が多かった。中には、常念岳で日本百名山全山登頂を達成された方もいた。
過去2回の登頂を思い出しながら、3度目の登頂は104座目となった。
次の日のコンディションを考えれば、横尾山荘へと下りた方がいいが、蝶ヶ岳からの穂高連峰を見てから下山したい気持ちと徳澤園に宿泊してみたい気持ちが強く、迷わず蝶ヶ岳ヒュッテに駆け込んだ。

時間的には徳澤園に下山する猶予は十分にあったが、穂高連峰には依然として、雲がかかったまま。どちらを優先するか悩んだが、蝶ヶ岳からの穂高連峰を次またいつ見られるかわからないと思い、蝶ヶ岳ヒュッテに宿泊することに決断した。あとは日暮れまでに、雲が晴れて、穂高連峰が顔を出してくれることを待つだけだった。

3時間ほどヒュッテで待ち続け、夕方待望の瞬間がきた。
夕暮れのわずかな時間だったが、雲がすっきり晴れて、雪化粧の穂高連峰の大パノラマが広がった。
最高の瞬間だ!!
太陽が沈んだあとも、惜しむように少しずつ空が暗くなっていくのを見続けた。
徳沢へ下山したい気持ちをぐっとこらえ、この先しばらくは見に来ることができなくなるこの場所からの景色に見入った。山が最高の時間をプレゼントしてくれた。

駆け抜けるように、常念山脈を南下したが、長かったようで、あっという間の1日となった。

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