日記

一宇にて
2018.05.24

強く、冷たくも気持ちのいい風を全身に受けながら、朝日を見て、3日間お世話になった剣山頂上ヒュッテから、今日の目的地、つるぎ町一宇の集落を目指した。
昔は煙草や林業が盛んだった一宇も今は最盛期の10分の1まで人口が減ったという。しかし、谷間から見上げても見えない、山の中腹に張り付くように建つ家々を見ると、不便な土地でも先祖から続く大切な故郷を守ろうとする息づかいを感じる。

60年以上前は一クラス100人以上の同級生がいたと80歳のお爺ちゃんが笑いながら教えてくれた。笑いじわが印象的だった。きっと当時は谷間にある学校へ山々からたくさんの子供たちが列を成して、登下校したのだろう。子供たちの笑い声が谷に響いたのだろうと、日本一太いエノキを目指す坂道を上りながら思った。

途中で大きなお堂を造る大工さんと話した。一宇の無縁仏を納骨するためのお堂を建てるという。もう、身寄りもなく身内もなく独り最後を迎えた方が一宇にもたくさんいるようだ。
力強いエノキに力を分けてもらい、昼過ぎに一宇の中心部へと下りた。

夜7時から始まった四国で初めての交流会には、県内外から150人を超える人々が集まってくださった。約2時間だったが、皆さんの笑顔がうれしかった。
質疑応答の時間には多数の質問をいただいた。その中で、病により余命がわずかとなったご家族の方へどう言葉をかけたらいいかという質問をいただいた。
これまでにも多数の方々から、直接会って言葉をいただいたり、手紙やメールなどで病に立ち向かっていることを打ち明けていただいた。その度に返す言葉に悩み、考えた。そして、出てきた言葉は「ありがとうございます」だった。
僕にとって、精一杯の言葉だ。
自分も含め命という砂時計はいつ倒れてもおかしくない。だからこそ毎日一生懸命生きようと思える。そして、当たり前に来る日常に感謝しよう。

今回、つるぎ町一宇にて交流会を開催するにあたり、ご協力してくださったトリップの皆様、つるぎ町役場の皆様、そしてご来場の皆様ありがとうございました。

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