くじゅう連山
2018.02.24
放射冷却でかなり冷え込んだ朝、あこがれだった法華院温泉を出発。今日は、くじゅう連山の頂という頂を連登する。坊ガツルをわたり、大戸越から北大船山を経由するコースで、15座目の大船山を目指す。直接登るコースだと、山頂までは2時間と地図にあるが…。
山は不思議だ。歩き出すと遠くに見えたはずの山もどんどん近づいてくる。カチカチに凍った踏みあとに足を取られながらも、大戸越まで登ると太陽の暖かさが全身に伝わった。そして春になるとミヤマキリシマが一面に咲く、北大船山への斜面を登る。低い木に何度も頭をぶつけながら、北大船山まで登ると朝日を浴びる九重山の山々が見えた。
逸る気持ちを押さえながらも、山荘で見た大船山からのパノラマ写真の景色を見たい気持ちが背中を押す。
9時半に大船山に登頂。見事な冬の九重山の大パノラマを見ることができた。初めての東側からの眺めは、九重山の中庭を覗き込んでいるように感じた。
山頂で出会った地元の方は九重山に魅せられて、70回以上も登られているという。大船山はどんな存在かと聞くと「あこがれの山」と答えてくれた。それを伺ったとき、きっとその答えは、九重山に登ったらわかるのだろうと思った。
山頂で1時間、コーヒーを飲みながら、時間ギリギリまで大船山からの眺望を楽しみ、再び法華院温泉に戻ってから、鉾立峠経由で九重山一つ目の白口岳(しらくちだけ)を目指した。見上げるほどの急登は由布岳を思い出すほどで、見上げる回数よりも、振り返り坊ガツルや大船山を眺める回数を増やした。
白口岳に立つと、大船山から中庭のように見えていた場所がぐっと近づき、その中へと足を踏み入れたことを知った。
右に九州本島最高峰の中岳、正面に久住山、左に稲星山(いなぼしやま)が見えて、それぞれの山頂に立つ人影や次の頂へと向かう姿が見える。それぞれの頂に立つとそこからはどんな景色が広がっているのだろうと、想像や期待が膨らんでいく。
白口岳からは、稲星山→中岳→天狗ヶ城→御池→久住山→星生山→牧ノ戸というルートで進んだ。まさに九重の中庭を駆け回る感じだ。
中岳には、この旅始まって最も多くの登山者が出迎えてくれた。皆さんの笑顔が輝いているのが印象的だった。それから、凍った御池を歩き、一人感動の時間を過ごした。、本峰の久住山へと日は傾き始め、気づけばそれぞれの山頂にいた登山者が方々の下山口へと向かう姿が見えた。
4年ぶりの久住山に立つと、やはり6年前に最初の挑戦のきっかけとなった旅での感動を思い出す。誰もいない山頂から見えた、遠く阿蘇山の姿が美しかったのを忘れられない。
ちょっと予定よりも時間が押していたので、最後の星生山(ほっしょうざん)を諦めようかと思ったが、大分から来たというおじさんから、星生山からの景色は格別だと聞いて、やっぱりいくことにした。
久住分かれで山頂に手袋を忘れてきてしまい、もう一度久住山まで登り返すという珍事があったが、西日に輝く九重山や大船山を星生山から見て、諦めずに登ってきてよかったと心底思った。九重の中庭は1日でいくつもの頂に登ることが出来、そして、それぞれに景色の変化がある。自分の体力に合わせて、コースをセレクトできるのも魅力の一つであり、たくさん登山者を何度も引き付けて止まない理由なんだと思った。いわば、最高の遊び場だ。
星生山からみえた大船山はちょっと離れただけなのに霞がかかり、手が届きそうで届かない、そんな姿に見えた。いつかあそこへ行って九重山を眺めてみたい、そう思わずにいられない。
こんなにくじゅう連山を味わい尽くすことができるとは思っていなかったため、牧ノ戸に無事に到着したときは充実感に包まれていた。
一度では味わい尽くせない山、それがくじゅう連山。
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