海峡横断1日目
2018.01.04
緊張のあまり眠ることができなかった。なぜなら、冬の大隅海峡(おおすみかいきょう)へ挑むからだ。昨日までの風も波も少し落ち着き、天気予報でも時間の経過とともに、風は落ち着いていくとなっていた。しかし、予報はあくまでも予報。冬の天気は数時間で変化してしまうということを考えると、決して安心できるまでのコンディションではなかった。
7時40分、宮ノ浦川の河口から出発した。
おそらく緊張で顔がこわばっていただろう。屋久島でお世話になった方々から「頑張ってー」「また遊びにおいでー」の声があたたかかった。
漕ぎ出してからの1時間は、気持ちが落ち着くまで何度も深呼吸を繰り返した。
スタートから3時間まではかなり順調だった。風は穏やかで波は2メートルほどだったが問題ない範囲だ。シーカヤックの巡航速度も8キロほど、このまま風が静まれば…と期待したが、自然はそう甘くはなかった。
正午を回ったとたん、風は7メートルほどとなり、波も大きく、大潮の影響で潮流も速く、全てが北西方向から向かってくるため、2時間漕いでも景色の変化が無くなってしまった。まさにルームランニング状態だ。
これ以上状況が悪くなれば…屋久島へ引き返すことも脳裏によぎったが、亀のようにジリジリと進んでいたので「我慢我慢あきらめるにはまだ早い」と言い聞かせ、漕ぎ続けた。
体力的に厳しくなる後半も巡航速度は6キロほどを保っていたが、潮流との差し引きで実際は3~4キロしか出ていなかった。あと1時間竹島に接近するのが遅かったら、真っ暗になってしまっていたが、あきらめずに自分を信じて漕ぎ続けたことで、日暮れギリギリの17時15分に無事竹島の漁港に到着。9時間30分の我慢比べとなった。